心に響いた詩

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This topic contains 48件の返信, has 2件の返信, and was last updated by  mariko sumikura 3 年 11 ヶ月前.

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  • #1007

    mariko sumikura
    キーマスター

    ここには、いままで読んで心に響いた詩(外国の詩でも日本語訳があるならOK)をアーカイブしていきましょう。
    ただ、著作権侵害にならぬよう、またもっと読みたい方の便利のためにも、詩集名や詩誌名、引用元を書いてくださいね。

    詩人にどんな詩が好きですか?と聞くと喜んで答えてくれるものです。
    それなら詩人自らが読者におすすめしてもいいのではないでしょうか?

    この下に投稿欄がありますので、そこに書き込んでください。
    バラエティに富み、心にスパークルする詩でいっぱいのポエスクにしてゆきましょう。

    • This topic was modified 5 年 5 ヶ月前 by  mariko sumikura. Reason: 文字修正
    #1008

    mariko sumikura
    キーマスター

    「景色の別れ」から ヴィスワヴァ・シンボルスカ  ノーベル文学賞受賞1996年ポーランド女性詩人

    ある湖の岸辺が―まるで
    あなたがまだ生きているかのように
    昔のままに美しい、という報せ

     (略)

    時にすばしこい、時に怠惰な
    そしてわたしに従順でない
    岸辺の波に
    わたしはいかなる変化も求めはしない

    ある時は エメラルド色の
    ある時は サファイア色の
    ある時は 黒々とした
    林のほとりの淵に
    わたしは何も要求しない

    ただ一つ肯けないのは、
    そこへ自分が戻ること
    そこにいるという特権―
    わたしはそれを放棄する

    わたしは その程度 あなたを生きた―
    遠くで思うことができる その
    程度だけ

    訳:関口時正 (京都新聞1996.10.7より)
    投稿:すみくらまりこ

    #1075

    mariko sumikura
    キーマスター

    優し風
               バム・デヴ・シャルマ(バングラデシュ)
               すみくらまりこ 訳

    優し風が
    曲がり道を歩く乳運び女の
    スカーフを押してあげる
    星に歌いながら
    背中に坊や
    街に着く
    何度もからだを打ち
    倒れはすまいかと
    そして乳の甕を下ろす

    こどもはぐずっている
    運命のあるところしらずして
    吸い付く乳首をさがし泣く
    しかし街につくまでと
    母はなだめ
    そして店に着き
    大きな鍋に乳を注ぎいれる
    それに店主は皮肉な目で
    成分計を突っ込むんだ

    もし先にお金を頼んだら
    哀しげな乞いになる
    わずかの食べ物か
    こどもに飴を買ってやりたい

    絶望の
    背中よ
    しかし彼女の思いは逼塞しない
    家畜の世話のことを思い出す
    薪をあつめ
    膝にのせてまとめ
    星のように確りと歩む

    疲れたこどもは静かになり
    泣いては眠り、眠っては泣く
    彼に割り当てられた慰めは
    家へはやく帰ること
    しなびた乳首に吸い付くこと
    豚のようにくんくん云って
    そして満ちたりたら遊ぶこと

    けれども母には時間がない
    森を走らねばならない
    木の枝を集めなければならない
    牛やヤギのため
    車輪を回すように
    そう彼女は「丸太」を放ってきた
    庭のモルタルの上で
    子供はあらんかぎりの声で泣く
    彼女が駆けてくるまで

    たぶんこれは旅の終わり
    ネパールの女が
    丘や谷の奥に営んでいるもの
    しかし風に不平はいうまい
    衆人に彼女を見ないだろうし・・・

    • This reply was modified 5 年 5 ヶ月前 by  mariko sumikura. Reason: 修正
    #1193

    下田喜久美
    参加者

    7月こそ さわやかに出発しよう  (題)
                          
    道は峻厳と豊かさと
     ラッキーな道しるべとを指示し
    歴史に刻んだ7月                                  
     風は豊かな安らぎを際限なく運んできてくれる
    長い目的のための闘争と山への登攀        
    ますます険しい道へと差し掛かる                        
    ようやくにして立ち戻った安心と平安と静謐
                                                 
    世界の優しさを抱いて
    その日 道端の菫が微笑んでいた                        
    一日の終わりの眠りにつく
    空には  雲が悠々の意味を教えてくれる     
    川は忘れることの幸せを 忘却の彼方へ 記憶を預け          
     清新の7月 これこそがさわやかな出発だ      

    下田喜久美心に響く詩を書き                                                                    
    ました。心に響いた事です、変でしたね

    • This reply was modified 5 年 5 ヶ月前 by  mariko sumikura. Reason: 行なおし
    #1279

    mariko sumikura
    キーマスター

    映画監督黒澤明の言葉。
    「映画というのが何なのか。いまだに分からない。
    これまで撮ったどの映画も、映画的だと思える瞬間は2、3ヶ所しかありません。
    私の夢は、冒頭から幕切れまで そうした瞬間で満たされた映画を創ることです」

    詩ではありませんが、一脈通じる深い言葉で新聞CMを切り抜いておきました。

    #1360

    mariko sumikura
    キーマスター

    誰なんだろう
             尾崎まこと(「千年夢見る木」より)

    あなたは誰なんだろう

    みんな寝静まった
    真夜中
    満天の星座が
    天井であるような
    大きな図書館で

    一番つつましい
    一冊を選び
    ていねいに
    ページを繰っている
    温かな
    指のあなたは

          産経新聞「朝の詩」2008・5月間賞受賞

    #1430

    mariko sumikura
    キーマスター

    川と岩

    バム・デヴ・シャルマ(バングラデシュ)
       すみくらまりこ 訳

    父は岩になってくれと頼んだ
    母は川になってくれと頼んだ

    川が曲がりくねるのは怖い
    岩はとびきり変転していくし

    僕のからだは岩
    血液は川だ

    僕は約束を果たせない
    何年も決断が下せない
    両親は僕に最良の夢を
    見ているからだ

    僕は岩であり川だ
    陸地のクレバスの下
    夢の中を川のように流れ
    曲がりくねって流れるんだ
    景色のなか無秩序に
    僕を岩や泥の中へ壊す
    岩のような自分を抑えながら

    僕は漠とした怖れを感じる
    岩のようで液体のような自分を
    失くしはしないかと
    だから決心できないんだ
    なんと現実的な僕だなあ
    岩でも川でも
    で、質問させてくれ
    どちらが決めることなのかい

    #1468

    mariko sumikura
    キーマスター

    田中雲彩さんの詩(ブログより転載させていただきました)。詩は難しいものと思われがちですが、これが原点であろうと思います。

    『響(ひびき)』


    ジャズのセッションのように響き合う。

    心の底に閉じ込めたていた感情が

    出逢いを通じて、解き放たれる。

    喜び、悲しみ、怒り、希望・・・

    互いに、奏(かな)で合い

    交錯する陰陽の表出。

    多彩な感情の遺産は

    芳醇(ほうじゅん)な世界へと

    誘(いざな)ってくれる。

    #1730

    mariko sumikura
    キーマスター

    逢瀬
         バム・ディブ・シャルマ    

    絹の渡し舟が
    渚をすすむ
    優し風が
    帆柱に
    快い音をたてると
    慄きの水平線が
    腕を広げる
    彼の内気な相手を
    彼方へ抱き上げようと
    海の通路上
    絹の渡し舟は頭を向ける
    あたかも花嫁が
    荒れ狂う情熱に見失うよう
    彼女は、なおも、落ち着いている
    彼女の相手と会うように―
    愛する水平線
    夕日の境界で
    逢瀬は
    カメラに収められる・・・
    空のまなこは
    にわか雨
    ある幸福の表出は
    うれし涙に

    #1844

    mariko sumikura
    キーマスター

    エウリュディケ
    ヤナ・ストロラヴァ

    憶い出の微かに点滅する炎から
    忘却の河を越えて
    (魂の冥府から)
    光のなかへと導かれた 昼間に。
    彼は(ああ、あの悪戯っぽい微笑み!)
    まさに
    彼の硬貨の冥王なのか。いま、彼はあなたを
    目隠しで歩かせる(何なのか?そして何でないのか?)
    彼とともに、後ろについて・・・

    哀れー彼はもはや暗澹としていない

    しかしあなたは光のうちに
    この世にいまいちど!
    すみくらまりこ訳

    #1901

    mariko sumikura
    キーマスター

    誰が私の不安を買ってくれますか

    アナン・アード  すみくらまりこ訳

    わたしは永遠に心配しているヒトです
    誰が私に確かさを買ってくれるでしょう
    どこでわたしは沈黙の静穏を甘受できますか
    誰が静けさの王国を建ててくれますか
    どうすれば迷路を克服する勝利が得られますか
    わたしは永遠に心配しているヒトです
    大陸のまどろみから
    果て極まる渚から
    大洋の拍動へと
    毎朝自分を呼びだしています
    わたしの脈は不安の脈
    だからどうしてまぶたを眠りの音に
    合わせられるでしょう
    わたしの中には永遠の不安
    だからどうすれば自分を
    ジャスミンやチューリップの畑に
    運んでいけるでしょう
    永遠に心配しているヒトです
    誰が忍耐の錬金薬を貸してくれますか
    どうすれば港のなかの港に着くことができますか
    微笑む高貴の深淵へと
    登攀に成功できますか
    永遠に心配しているヒトです
    実在の闇から
    逃げ出したとき
    魂の楽園へ
    私の魂を持ち出したとき
    いつ永遠のなかの永遠へ
    永遠が旋律のなかの旋律を
    わたしに奏でてくれるのですか

    #1902

    mariko sumikura
    キーマスター

    避難所
    アナン・アード  すみくらまりこ訳

    わたしの悲しみが呻くとき
    そしてすべての小径が
    惑う足どりに窒息する

    こどもの笑みに避難所を探す
    いつも大人が陰鬱な成熟へと
    そして何とも可哀相な哲学へと
    わたしを引きずっていった

    日が暁との関係を否認し
    夜が聖人を拒絶するとき
    わたしは古代のイコンへと避難する
    わたしは一羽の鳥をつかまえる

    私はさえずる鳥をつかむ
    嵐がわたしを怒りの狂気へと
    押し込むときに

    わたしは母の祈りをつかむ
    戦争がわたしを残酷な噴火口へ
    投げ込むたびに

    わたしは小翼の美にしがみつく
    牢屋と壁がわたしの前で
    せりあがるたびに

    #1906

    mariko sumikura
    キーマスター

    正と負のはざま
             ラウラ・ガラヴァリア すみくらまりこ訳

    正と負のはざまに
    零の円があればよい
    無であり全であり
    空であり満である
    零は完全な円にみずからを包み込む
    零は境界をあらためて閉じる
    後悔を消しさり
    諦念という
    遅効性の毒をもる
    不安定なバランスの綱渡り芸人は
    ゆっくりと光陰の矢を折り渡っていく

    #1907

    mariko sumikura
    キーマスター

    二つの魂が
    * ドナテッラ・ビスッティ  すみくらまりこ訳
    *
    二つの魂が互いに寄合う
    生き生きと、突然に
    ひとりが相手に話す
    あたかも世界に光が満ちたよう
    突如 それまでの慎み、それまでの漠然が
    語られるものが形を為し
    言葉は笑い
    静寂は涙に
    そして
    あなたは止めることも放棄もするべきではない
    このために、そう、神のために

    #1917

    mariko sumikura
    キーマスター

    憂鬱
    * ジャーメイン・ドルーゲンブロート    すみくらまりこ訳
    *
    君だと分かる
    僕の心の茂みを抜けて
    引きずる足の運びで
    *
    アザミの香りと
    蒸せて染む雨で
    殺さずの死のように
    苦澱の味する葡萄酒で
    *
    が、とりわけ僕には分かる
    君だと
    鴎が
    風に啼くよな
    僕の孤独の声で
    *
    *
    蓮喰う人
    *
    吾身の血に
    溺れつつ
    熱帯の太陽は
    シャム寺院に
    降り注ぐ。
    *
    三日月屋根のうえ
    神さびた夕が
    夜を生み出す。
    *
    異国の少女の
    はかない声音が
    霧の名残を消しつつ
    夜の夜中まで
    蟋蟀の音と交り
    仏陀を讃う。
    *
    幽かに
    僕の心は呼吸する
    千と一つの蓮を通して。
    *
    *
     憧れ

    空は青、
    神さびて白く
    崩れんばかりの雲が掛る
    憧れを溜めきって
    *
    憂愁のように
    時に静かに雨が降り
    鳥の群れは
    声をひそめ
    驚いているかのよう
    僕の向う見ずな心に
    それは紙の帆で
    錨を上げたものだったが。

    #1932

    mariko sumikura
    キーマスター

    静寂
    バム・デム・シャルマ   すみくらまりこ訳
    *
    静寂は
    地球から空へ
    無数の音を壊す効がある
    心に広がり
    優雅な落ち着きに収まる
    *
    静寂は梳く 気まぐれな運命を
    好戦の狂騒を潰しながら
    あたかもみち潮が
    はるかに広がり
    蒼い波に催眠したように

    静寂は多くを惑わせる
    岩のように傲然と
    台風のように荒々しく
    *
    静寂はきみが動くのを待つ
    きみの懸命な選択を求める
    多くの時間が 手招きをする
    静寂を聴いてごらん
    きみが時々翻訳できない
    意味に必要なんだ

    #2465

    mariko sumikura
    キーマスター

    ノルドの絵に

          ドナテッラ・ビズッティ すみくらまりこ訳

    赤と黄が燃える

    荒々しい歓びに

    鬼が子を喰う

    血肉を我が物としつつ

    たぶん 美は

    いのちの芯の

    究極の飢え

    *

    光かがやく溶岩のへり

    灰の褪せていく色

    目が

    もう眩まぬとき

    スミレがみえる― 後に

    すこし後に

    内気に窮屈に―

    光の花環

    *

    それは花冠の好戦性を和らげる

    しずかに敗戦を勝利に変える

    闇にあえかな裸身

    *

    それだけ見るがいい ただ

    それらは動いている:ある動き

    さざなみが絵を抜けていく もはや彩られた画布でなく

    めくる頁だ

    開かれていたり、開かれようとしていたり

    また 攻める風に抗するため

    おのずと閉じようとしたり

    *

    それは いのちが与える以上に

    光る花の影

    むしろ 担った壮麗さを

    外そうとするように

    ―その茎とレース

    *

    それは素晴らしいアニメ

    細密で、騒々しい、

    一体となりどの方向へも動く

    灰色の筆がすっと動くと:勝利の渦が

    風に従う

    それゆえ

    鹿やノウサギのわなを

    外すことができる

    *

    而してあなたは黄の核に気づくのだ

    深い闇のなかの小さな星

    その光、その種子に

    *

    最後になって あなたはマーガレットを知る

    赤の栄光の変わりに黄の

    退却を

    *

    花瓶に抗してぎゅうっと集められ泣く

    怖れる そして花びらは

    花粉を擁するスミレの顔を

    切り落とされる顔を

    守ろうと上げた腕だ

    *

    あなたは知る

    スミレさえ萎れて負けても

    花瓶のなかでもたれつつ

    死にゆくことを

    #2466

    mariko sumikura
    キーマスター

    月に漂う詩想

           ドナテッラ・ビズッティ すみくらまりこ訳

    空  1

    水のうえの白い花

    もはや夢に薄れて

    空  2

    水面に映る

    遥かよりの光

    空に

    月が自身の問いを体現する

    カンツオネッタ

    あなたのため

    夜の女となりたい

    闇のなか わたしの月を

    差し出したい

    ペネトラリア

    月は後ろにでている

    少女の顔つき 蒼ざめて

    どす黒い水へ

    捨てられた花のように萎れて―

    雲のなか 涙をくぐりぬけ

    天が打たれる

    #2474

    mariko sumikura
    キーマスター

    夜の泉
       フリオ・パヴァネッティ   すみくらまりこ訳

    天空に月もなき夜

    光跡もない星の不在から

    ひとり眠れぬ夜

    燭台の抑制された蝋燭から

    不眠の欠片から、その黒いむちから:

    人生から傷を負って、詩が僕のところに来る

    #2481

    mariko sumikura
    キーマスター

    足首飾り
        B・B・ボルカール
    *
    あの日、バンヤンの樹の下で
    柔らかな光をもて
    黄昏がくるように
    きみの足首飾りが近づいた
    *
    森は静けさを呑み
    葉っぱは興奮に震えていた
    まどろんでいた葉の剣が
    やさしく身を起こした
    *
    寺の鐘が遠くで鳴った
    川の細い場所も堤も膨らんでいた
    二つの影法師は香りへと弾けた
    ただ一瞬のことだった
    *
    こころの至福
    まなこの涙は
    宝石に変わり 光っていた
    ぼくたちが一つになったと
    分かったときには
    *
    どれだけそこに佇んでいたのか
    小さなバニヤンのさやのように
    ライスシャワーの雨がふる
    いくつもの天界を越えて
    こころの恍惚のうちに
    *
    きょう 何も残っていない
    ぼくの人生は黄昏になずんでいく
    でも、いまも、とつぜん
    きみの足首飾りの音が聞こえる
    *
    愛の荒波が押し寄せるのだ
    美しい旋律がぼくを打ち負かすのだ
    ぼくが見るこの夢が
    不眠の夜な夜なを越していくのだ

    #2508

    mariko sumikura
    キーマスター

    幸福を手にする
      バム・デヴ・シャルマ すみくらまりこ訳

    幸福は
    あそこの星からも
    決して、滴(しず)り落ちてこない
    澄んだ空からも
    落っこってはこない
    それは悲し気で汚れるもの

    どうすれば得られるか誰もしらない
    海の深く
    底まで探せば
    真珠を見つけることができると

    それは心にあるのだ
    無感覚の細胞に祀られて
    気構えのある
    が、揺るぎのない
    陽気な信頼をもって
    困難と苦悶にもかかわらず
    経験という宝石を捧げた
    エルヴァ・エジソンの実験のように
    もしくはゴータマ・ブッダのざんげのように

    いかなる手段でも
    それを手にする必要はないのだ
    騙された気まぐれと空想でなく
    信頼と信念によって
    陶冶を学ぶことのほかには

    #2512

    mariko sumikura
    キーマスター


    イグ・ラブリュス
            すみくらまりこへ
         
    桜が
    その朝
    はらはら落ちる
    抜けるような白さで
    太陽の方を向こうとする
    生身の息が
    戻ってきたよう
    だが
    桜は
    己を散らせて
    土に果てる
    何も有さず
    そのゆえ何にも有されず
    誰にも記憶されず
    桜は未来もなく
    ただ遠くへ戻りゆく
    忘却の記憶を携え
    誰も知らない
    過去からやって来た
    波の綾をすべり
    われらを隔てる
    時の翼が羽ばたく
    宇宙を渡り
    雪間にみえる
    月のように傾き
    そして消え去りし桜は
    死なんと願ふとき
    すでに光のうちになく
    われもまた同じく
    滅びの
    跡筋をたどるのだ

    #2519

    mariko sumikura
    キーマスター

    恋の詩
         クレリア・イフリム   すみくらまりこ訳

    なみだはもうありません。
    小石はわたしの背骨に溶けてしまいました。
    ときどき、満月のとき、
    この真珠をかぞえます
    そして取り替えます。
    痛みは光のカーテンです
    病院からティファニーの幕をとおって
    流れてくるのです
    あなたは毎朝が背骨にすべり落ちてくる
    このティファニーの光が
    分からないでしょう
    どんな布も覆えないのです
    どんな愛撫も触れられないのです

    #2521

    mariko sumikura
    キーマスター

    憂鬱に焦がれる
            クレリア・イフリム

    わたしの憂鬱に焦がれる
    ここで共にあったから、
    ずっと一緒だったから、
    毎日を
    わたしと泣き笑ったから
    一緒にお皿を洗ったから
    朝日にあって
    それは光の条だったから
    月光にあって
    それは泣くことのできる
    真珠だったから
    ええ、天使が応えてくれたから
    街の人びとのなかの彼を
    そっと連れてきてくれたから

    #2530

    mariko sumikura
    キーマスター

    冬の日
        メティン・センギズ (トルコ)   すみくらまりこ訳

    冬の日のお前を知ったのだ
    お前は疑問符を広げていた
    俺を除いた誰の愛にも

    お前の顔に並木道、足跡があった
    悲しみでいっぱいの愛 それに養われたお前の心が
    正午の太陽のように
    俺を除いて施されたようだった

    お前はいま奴らから離れて俺の心だけにある
    俺たちは冬の日に咲いている花
    おのれの灰のなかの悲しみに

    #2536

    mariko sumikura
    キーマスター

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    #2537

    mariko sumikura
    キーマスター


        メティン・センギズ   すみくらまりこ訳

    *
    *
    お前の顔に何かがある 突然晴れた空のよう
    また雨が降る、木々に、通りに
    夏薔薇の香りのような何かがあると思う
    お前の顔の太陽が次第にそうなっている
    *
    ほかに何かわからないものがある
    人びとは熾天使のあいだを歩いているようだ
    川は己の道が夜を壊しているのを初めて知る
    夢の美しい色で流れているのを知る
    *
    それは古えからの何かであるにちがいない
    突然心にかかりそして忘れていくように、
    ―たぶん、これがいわゆる愛と呼ばれるものなのだ
    お前の微笑みにからだを震わせていて、熱い血が流れているものなのだ

    #2542

    mariko sumikura
    キーマスター

    すべて不思議があるのだ
           バム・デヴ・シャルマ   すみくらまりこ訳

    山はキャンプファイアの下にある
    岩々とごろごろ石
    星明りに舞い踊れよ
    木々を覆う雪は
    恥じらい立ちて手で押し返す
    狡猾な葉を苛立たせる優しい風よ
    白いエプロンを着た岩もある
    隊商が向こう見ずに進んでいる
    コマドリに運ばれる乾いた葉が
    川に落ちている
    すると魚が驚いて
    波をたてる
    青い波の下
    月は証人
    くたびれた草に潜み
    穏やかな夜明けを待つ
    甲虫やバッタを見ている
    かなたの家では
    バルコンで出産を待つ女が
    空をながめている
    空はお腹を優しくなでている
    数えることは巡ることを意味するのだ
    全て不思議があるのだ
    無感覚な空から
    内気な地球に滴(しず)るものには

    #2549

    mariko sumikura
    キーマスター

    単純
         ベン・ベール すみくらまりこ訳

    まだ夏だ
    手にのるテントウムシに
    風はやさしく触れる
    穏やかなる宵
    わたしはポーチに
    ただ単純に座している


    八月も終焉だ
    誰も融けた氷粒を思うまい
    そしてそれも
    その果てを―
    そう誰も知らないのだ
    どうして風が歌うのか
    どうなっていくのか
    そう それは必須でもなく
    求められてもいない
    しかし草が必要としている
    雨は、いまいましい
    その雨は、求められている
    のろのろ歩く虫には
    土にとって
    我々にも


    風はそこにいて
    求められることを知っている
    宵にはどう吹けばいいかを
    ライラックの枝と
    牧羊犬の鼻先に
    シンクロして吹けばいいと

    何も知らない
    見えていない人には

    闇の背後に
    闇は待っているから

    草はすでに
    緑の極みに達した
    波はその名を叫ぶ
    子供っぽい大きな問いに
    小さな答えを


    思索が手探りする
    刹那というものがある
    石の上で
    待ち慣れている
    夜に目が利かぬ
    ヤマアラシのように

    わたしは
    ポーチに
    ただ単純に座している

    #2550

    mariko sumikura
    キーマスター

    新しい日に備えよ
    ベン・ベール   すみくらまりこ訳

    愛の刹那を思え
    道の果てを知れ
    その原点で

    雨を待って立ち続けろ
    草の一年をみよ
    我々が立ちし処で
    そこで手で受けよ
    (防備のために)

    愛を思え、知れ
    雨は降りはじめよう
    手を空けよ

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