武西良和

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  • #1250

    武西良和
    参加者

    魚と少年
            武西良和

    尾びれを揺らし
    ぷくぷくと口を動かし
    岩陰でバランスをとっていた

    勢いよく手を突っ込み
    つかんで陸に放り上げる

    砂まみれになって躍る白い腹に
    釣り針を差し込み
    引き裂いていく

    ピクピク動く生命の輝きを
    針の
    先端が奪っていく

    浮き袋
    心臓
    肝臓

    ・・・・・

    臓腑をすっかり取り出された魚は
    動きを弱め
    やがて動かなくなった

     詩集「岬」2013より

    #1264

    mariko sumikura
    キーマスター

    金の網

           武西良和

    風がゆする
    水面がゆれる

    水底に金の網が光る

    網のゆれが魚たちの泳ぎを磨いていた
    網は柔らかく心地よく
    泳ぎ進むにつれ
    研ぎ澄まされていく

    波が止み網が引き上げられた

    魚たちは急に不安になり隠れようとしたが
    岩陰は余りにも遠く魚は
    透明に捕えられ
    自らの影に身動きできなくなった

    それを見た男の子が
    手を突っ込んで掻き回すと
    魚は広がる輪になって
    どこかへ行ってしまった

     詩集「岬」2013より

    #1265

    mariko sumikura
    キーマスター

    海の子ども
    武西良和

    打ち寄せる
    波を何度も見ているうちに
    見つけたはずの少年を波のなかに
    見失ってしまった

    波打ち際に近づくと波は遠く
    沖から
    少年時代を
    打ち寄せてきては磯にぶつける

    遠い記憶は
    粉々に砕け散っていくが
    それでも少しずつ拾い集め合わせてみれば
    過去の記憶の音がする

    波に浸って少年が岩の間から海草を
    引っ張り上げ
    妹はその手助けをして
    海の声に耳をそばだてる

    つり竿を持った父は
    近くで声を聞きながら遠くへ
    竿を振る

    何度投げてもつり上げられない
    重すぎる過去
    粉々になって水辺の砂に混じって
    選り分けられない

    波は果てることなく
    岸辺に打ち寄せては沖に引いていく
    秋の夕日が徐々に
    西の空へ引き込もうとする

    海面が映した空を幾度も砕いていたが
    砕けない空をあきらめ
    透明な海の底に沈めてしまった

    砂を固めたテトラポットや
    四角いコンクリートの塊が
    水際に置かれ波音を誘っている

    浅すぎて舟は岸に近寄れない
    渚を走っている犬は
    海のなかへ入ろうとはしない
    犬は過去をもたない

    二人の子どもは
    遠くで叫ぶ声を聞きながら
    岸と海
    の間を行き来している

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