飛鳥聖羅「芦屋レジェンド」

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  • #316

    飛鳥聖羅
    参加者

    飛鳥聖羅の詩のページです。

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    #317

    飛鳥聖羅
    参加者

    見知らぬものがやってくる

          飛鳥聖羅

    いま新しい伝説が始まる
    芦屋の朝日ヶ丘の界隈で
    一人の詩人が歩き出した
    右手に叡智の哲理を握り
    左手に勇者の宝剣を携えて

    芦屋に新しい風が吹き寄せ
    時代が熱く鼓動を打ち始めた
    新しい時空の宇宙の海を
    航海していく人間の物語だ
    新しい時空に湧き出すのは
    一人の男の頭脳から生まれる
    不可思議境のイマージュだ

    トロヤ王プリアモスの娘
    カッサンドラは
    トロヤ戦争を予言したが
    後に殺された
    古代オリエントのアーリア系の
    山岳民族カッシートは
    紀元前十六世紀ごろ
    バビロニア第二王朝を倒し
    第三王朝を樹立したが
    紀元前一一五五年
    エラム人によって滅ぼされた
    つわものたちが駆け抜けた
    夢の跡に蝶が飛ぶ

    力のあるものも力のないものも
    賢いものも愚かなものも
    栄枯盛衰は避けられない
    変らないものは
    ただ我が胸の内なる天の星と
    蓮華の美しき光のみ
    湖に月を浮かべ
    海原に日を抱く
    見知らぬものがやってくる
    新しい幸せの形と力をたずさえ
    微笑みながら
    親しげな顔をして近づいてくる

    遠いところには何もない
    蜃気楼が見えるだけだ
    遠くは霞んでいてよく見えない
    ダイヤモンドは
    自分の住む町を流れる
    変哲もない川の砂利の中に
    混じっているものだ
    心の目を開けてみれば見えてくる
    ぼくのしあわせは
    雨の降る音の中に棲んでいる
    色づいた樹々の葉をふるわせる
    風の中に棲んでいる
    夜空の星屑の連なりの中に棲んでいる

    幸せは
    朝と晩に他者の安穏を祈る
    ぼくの脳髄の中に棲んでいる
    脳髄の中の噴火口だ!
    羅針盤のように進路を示す
    日の光の中に棲んでいる
    母と子どもの会話の中に棲んでいる
    買い物をする主婦の
    自転車のハンドルの上や
    学校帰りの児童たちの
    おしゃべりの中に棲んでいる
    此処を去って彼処に行くのではない
    今いる此処にしあわせがあるのだ

    それはハンバーグを食べながら
    テキストを開く学生たちの
    テーブルの上に棲んでいる
    夕焼けに包まれた軒下や
    若い夫婦が肩を寄せ合い歩く
    乳母車の中に棲んでいる
    道端の草花や街路樹の中に棲んでいる
    幸せな人を愛する
    ぼくの胸の中に棲んでいる
    幸せな人を妬まない
    胸の中の泉に棲んでいる
    これが天山のごとき真理というものだ

    それは幸せを呼ぶ人の呼び声に応える
    こだまの中に棲んでいる
    自分には価値があると信じている人の
    後ろ髪の中に棲んでいる
    宇宙の中で自分と同じ人はいないと
    知っている人の足の指先に棲んでいる
    それは生きていることが
    とても幸せなことだと思える
    人の心の中に棲んでいる

    生きていること自体が
    火の鳥の歓喜だと歌っている
    ぼくの背中に棲んでいる
    それは目の前の人を大事にする人の
    腕の中に棲んでいる
    愛嬌たっぷりの鳥のように
    ぼくを見守る父の
    五臓六腑の中に棲んでいる
    父子の絆は鞭のようにしなやかだ
    ぼくを産んでくれた母親の中に
    夏の向日葵の炎と燃えて棲んでいる

    それはいつでも
    家の玄関で帰りを待っている
    さりげなく置かれた薔薇の顔をして
    ぼくが眠るベッドの中で
    手招きしている
    青い瓦の屋根の上から
    やさしく見守っている
    世界の中でまちがいなく一人の人が
    ぼくを幸せにするために生きている
    それはだれか
    それは誰でもなくぼく自身だ
    ぼくには自分を幸せにする役目がある

    いま此処に
    エメラルドグリーンが在るのだが
    それは紺碧の海の色
    航海する旅人を憩わせる
    癒しの色をしている
    人の心に上げ潮をもたらす色だ
    それは大地の中で
    人の幸せのために燃えつづけた
    鉱石の熱情の色にちがいない
    大地からの贈り物だ
    何億年も青い大地に秘められた
    神秘と愛情のほとばしりだ

    宇宙にあるすべてのものは
    ぼくたちの幸福のために
    輝いているのかもしれない
    これが永遠の真理の宝剣だ!
    宇宙がぼくたちをつつみ
    僕たちが宇宙を包み返していく
    いま見知らぬものがやってくる
    新しい幸せの形と
    力を持ったものがやってくる
    ぼくの歓びと舞踏のために
    大いなる響きと共にやってくる

    幸せは
    朝と晩に他者の安穏を祈る
    ぼくの脳髄の中に棲んでいる
    脳髄の中の噴火口だ!
    生きていること自体が
    火の鳥の歓喜だと歌っている
    ぼくの口の中に棲んでいる
    変らないものは
    ただ我が胸の内なる天の星と
    蓮華の美しき光のみ
    湖に月を浮かべ
    海原に日を抱く
    見知らぬものがやってくる
    新しい幸せを引き連れて!

    #318

    飛鳥聖羅
    参加者

    オーレリアン

           飛鳥聖羅

    あなたはゼフィルスを見たか
    六月の空からバラードの調べが降るように
    掌に舞い落ちるものをそっと受けてみれば
    それははかなく消えてしまいそうな
    ゼフィルスか
    金と緑の混じった翅が
    幻想曲のように不思議な色合いをして
    この道をあまたの蝶が翔んでいる
    そんな気がして思わず周りを振り向いた

    木漏れ日の降り注ぐ林の中で
    わたしはゼフィルスを追いかける
    日射しに誘われて樹々の葉にとまって
    あたりを伺っていた蝶たちが
    後からあとから舞い降りるので
    空はいつしか
    楼閣の色を帯び始め
    金緑色の翅をした蝶が
    目の前を染めていく

    夏の蝶は なんど翔びたっても
    また同じところにもどってくる
    そして わたしもまた戻ってくる
    悲しみだとか愛おしさをみち連れに
    きびしく暑い時は
    ゼフィルスは何処にかくれているのか
    誰かがささやく
    ブナやハンノキの幹をこつこつ叩けば
    ゼフィルスが翔びだすよと

    ゼフィルスが目を醒ますように
    いま見知らぬ誰かが樹を叩いたのだろうか
    それは知らない わたしは知らない
    わたしは古代の遺跡を訊ねる旅人のように
    長い時間をかけて歩いてきた
    わたしの足下に広がる大地
    何も知らず
    雑木林の樹を叩いたら
    金緑色や紫水晶の色をした
    ゼフィルスが翔びだしてくる

    つづいて少し幸せな
    オレンジ色のゼフィルスが
    次から次へ翔びだしてきて
    あたりは一面
    蝶の乱舞で狂いはじめる
    蝶の乱舞で狂いはじめる
    乱舞するゼフィルスが
    千年の夢の中で狂いはじめる
    トルコのベリーダンスを踊る
    若い踊り子のように舞い始める
    ようやく黄昏になって
    碧い妖精のような風が吹く

    その風が吹けば
    ゼフィルスは
    神経の網の目の樹々の梢に帰って眠ると
    見知らぬ旅人が歌っている
    それまでの時間
    わたしはどんな色をして佇んでいようか
    西の山から猟師が
    猟犬を引き連れて舞い戻るように
    夕風が吹くたそがれになるまで
    それまでの時間
    わたしはどんな色をして彷徨っていようか
    誰にも知られず独りで

    見果てぬ夢だとひとに笑われても
    骰子は投げられたと云って
    ルビコン川を渡ったユリウスのように
    勇気だけがわたしを
    未来に引き上げてくれたのでした
    ユリシーズのように
    いくつもの危難を乗り切ってきた
    太陽のコロナを抱くように竪琴をだき
    ホメロスのように
    詩篇を天にかざして歩いてきた

    あるときは 開拓時代の
    カウボーイみたいに歩いてきた
    わたしの足下にひろがる大地に
    生い茂るブナの樹
    それを思いっきり叩いてみたら
    悲しい涙を思わせる
    翡翠色のゼフィルスだとか
    すこし幸せなマルメロ色のゼフィルスが
    冬のオーロラのように翔びだしてきて
    あたりは蝶の乱舞で狂いはじめる

    乱舞するゼフィルスが
    神秘の色をした池の上や
    長い年輪を刻んだ樹の間で
    狂いはじめる
    西風の精ミドリシジミの
    光と風の乱舞が
    六月の天地に
    ふしぎな熱狂を呼び覚ます
    あなたはゼフィルスを見たか
    ようやくたそがれになって
    紫の葡萄のような風が吹くと
    ゼフィルスはなぜか梢に帰って眠ると
    見知らぬ舟人が歌っている

    水に流れたオフィーリアの
    髪のような樹々の梢に帰って
    眠るゼフィルス
    それまでの時間
    わたしはどんな色をして
    この緑深い林の中を佇んでいようか
    東の空に
    うるわしのヴィーナスと呼ばれる
    金星がしずかに昇る頃まで
    それまでの時間
    わたしはどんな色をして
    この林の中を彷徨っていようか

    遥か遠くの銀河系で
    新しい星が生まれ
    古い星が死んでゆく
    星のかけらが舞い飛ぶ
    気の遠くなるような時間のなかで
    インドはビハール州ガヤの南方
    パルガ川河畔にある
    仏陀伽耶の
    大塔みたいな鳥にでもなろうか
    銀河の輝きを帯びた翼の鳥にでも
    おお あなたはゼフィルスを見たか
    美しいゼフィルスが翔ぶ
    金緑色の翅が飛ぶ

    故郷のライラックや
    アカシヤの花を思い出させて
    ゼフィルスが翔ぶ
    北国の林檎やマルメロを思い出させて
    ゼフィルスが煌々と翔ぶ
    雪が舞うように
    乱舞する夏の蝶のゼフィルスが
    母や恋人のように
    何処とも知れぬ世界からやってきて
    金緑色の天使となって乱舞する

    森林の風を連れてくる
    夏の蝶のゼフィルスが翔ぶ
    ゼフィルスが光のように翔ぶ
    狂った光のように乱舞する
    ゼフィルスのなかで
    永遠のなんたるかを知っていく
    永遠の懐かしい父母に見守られ
    恋人と抱き合い愛し合う時間の
    何という美しさか!
    おお あなたはゼフィルスを見たか
    美しいゼフィルスが翔ぶ
    金緑色のゼフィルスが翔ぶ

    遥か遠くの銀河系で
    新しい星が生まれ
    古い星が死んでゆく
    星のかけらが舞い飛ぶ
    気の遠くなるような時間のなかで
    サン・マロ湾上の小島に築かれた
    西洋の驚異とうたわれる
    モンサンミッシェルの
    修道院みたいな鳥にでもなろうか
    銀河の輝きを帯びた翼の鳥にでも
    おお あなたはゼフィルスを見たか
    舞い翔ぶ翡翠が
    古代ローマの風を連れてくる

    故郷の奥入瀬渓流や
    十和田湖を思い出させて
    ゼフィルスが翔ぶ
    北国の白神山地や
    神秘の青池を思い出させて
    ゼフィルスが煌々と翔ぶ
    花が舞うように
    乱舞する夏の蝶のゼフィルスが
    母や恋人のように
    何処とも知れぬ世界からやってきて
    金緑色の妖精となって乱舞する

    アドリア海の真珠
    とうたわれるヴェネツィアの
    ドゥカーレ宮殿のように
    水に浮かび
    水を含んだ風を伝える
    ゼフィルスが翔ぶ
    そのなかで永遠のなんたるかを知っていく
    永遠の懐かしい父母に見守られ
    恋人と抱き合い愛し合う時間の
    何という美しさか!
    おお あなたはゼフィルスを見たか
    美しいゼフィルスが翔ぶ
    金緑色のゼフィルスが翔ぶ

    見果てぬ夢だとひとに笑われても
    骰子は投げられたと云って
    ルビコン川を渡ったユリウスのように
    勇気だけがわたしを
    未来に引き上げてくれたのでした
    あるときは
    アルチュール・ランボーみたいに歩いて
    歩いて歩きつづけてきた
    そんなとき
    神秘を形にした翡翠や
    金緑色のゼフィルスが乱舞する
    舞台へと踏み込んでいく

    セゴビアのカスティーリャ王の
    居城を浮かび上がらせて
    ゼフィルスが狂いはじめる
    西風の精ミドリシジミの
    光と風の乱舞が
    六月の天地に
    ふしぎな熱狂を呼び覚ましていく
    ようやくたそがれになって
    恋情の化石の
    アメジストのような風が吹くと
    ゼフィルスの光に包まれた
    恋人たちがいると
    見知らぬ旅人が歌っている

    ※注 
    ゼフィルスは、樹上性のシジミチョウの仲間を総称している。
    語源はギリシャ神話に出てくる西風の精ゼピュロス。
    ちなみに「西風」はゼファーと呼ばれていた。
    シジミチョウ科ミドリシジミ(緑小灰蝶)類の総称。夏、雑木林などを飛ぶ。
    雄の翅の表は金緑色、雌は黒色。食草はハンノキなど。
    幼虫はブナ科などの植物を食草とする。群飛をするものが多い。
    このゼフィルスに属するシジミチョウの雄は、木の枝の先端などで縄張りを張り、
    同種のチョウの雄が進入してくると追いかけて縄張りから排除する習性を持つ。
    一般に翅が縦に長く、森林性が強い。
    ほとんどの種がブナ科植物を食べ、卵で越冬する。成虫は六月から九月の間に発生する。
    ※オーレリアンは蝶を愛する人たちの意。

    #323

    mariko sumikura
    キーマスター

    宇宙がぼくたちをつつみ
    僕たちが宇宙を包み返していく

    なんと壮大なスケールでしょう。言葉の海に航海する詩人の浪漫詩に惹かれていきます。

    #353

    飛鳥聖羅
    参加者

    シンドバッドのように
    飛鳥聖羅

    小さなペンに大きなことはできない
    それでも部屋の片隅でうつむいている人に
    できることが少しだけあるかもしれない
    いつも心を虜にしてワクワクさせる何か
    誰かに聞いて欲しいけれど
    言い出せないでいる
    内密の物語など
    サンザシのように咲き
    あなたの胸の奥にうずたかく積まれた
    古書のように眠っている何か

    深海に沈んだ言い表しがたい
    幻の国の
    アトランティスみたいに
    心の眼だけに見える
    秘密の花園など
    声にするには
    たくさんの勇気がいるから
    まず書いてみたい
    例えば自分への心温まる一通の手紙を
    臆することなく書いてみる
    蜂鳥のハミングで
    包み隠さず赤裸々に
    すべてを打ち明けてみる
    もう一人の自分に
    グチも悩みも聞いてもらう

    そういう風に飾らずに書いてみる
    思いっきりすべてをさらけ出しても怖れない
    文章に句読点があるように
    息継ぎすることも
    立ち止まることも
    かけがえのない時間だ
    あなたの体から溢れた原石の言葉たちで
    机上の白い紙が埋まった頃
    気持ちがすこし
    軽くなっているかもしれない
    痛みがやわらぎ
    癒された自分に出会えるだろう

    そこから新しい一歩を踏み出せる
    一本のペンがあれば
    人は笑ったり泣いたりできる
    ペンには魔法の力が隠されている
    ペンは
    人を最高の塔へ昇らせる滑車となる
    ペンは
    苦悩の坩堝から吸い上げた毒液を
    癒しの薬に変える
    善良な魔術師となる

    ペン先からほとばしる筆跡は
    舞姫のような
    高らかな歓喜の舞踏となるにちがいない
    誰も思いも及ばぬ驚異の秘境となり
    四季の大地を
    光彩豊かに蛇行しゆく川になる

    ペン先からあふれた言葉の潮は
    黎明の海原に平安の旭日を昇らせる
    ゆえに
    わたしはいま
    高々と青い空に帆を揚げて出航する
    時鐘を鳴らし勇気の舵輪を廻す
    海原は何処までも青く洋々として
    太陽はつねに
    人を覚醒させる金色の光を放ちはじめる

    天から沙羅双樹の花が降り
    行く手を
    こころやさしいミューズが照らしてくれる
    ときには空に
    晴れやかな虹が架かり
    多くの夢を形にして
    花籠のように顕われる
    夜には銀河の星々が
    星めぐりの歌をうたい
    わたしは永遠の旅人の
    目覚めた航海者となる
    言語の極北を照らすオーロラは
    未来へとわたしの船を護り
    爽快に走らせる

    陸地をいく者は
    春の女神の幌馬車に乗って
    シルクロードの果てにある
    宮殿にたどり着く
    海原をいく者は
    歓喜する海豚を友にして
    雄々しい鯨の歌を聴いていたりする
    星と月と
    太陽の船に乗った船乗りみたいに
    愉快に笑い
    ワインレッドの酒を飲み
    つねに潮騒と海の微風に酔い痴れて
    永劫のシンフォニーの波に
    熱い涙を零している

    宇宙は
    わたしのために煌々と輝く
    宇宙は
    万象を彩る慈愛の光を降り注ぐ
    宇宙は
    わたしのために道を照らす
    それはすべて
    後に続く者たちの幸せのため
    かくして
    宇宙に降り注ぐ星の光が微塵となって
    すべてのものたちのための肥やしとなる
    誰かのために光の肥やしとなる
    そのためにわたしは
    高々と青い空に
    帆を揚げて出航する

    陸地をいく者は
    白鳥のような荷馬車に乗って
    トプカピ宮殿みたいなところにたどり着く
    海原をいく者は
    躍動するイルカを友にして
    アホウドリや
    カモメの歌を聴いていたりする
    星と月と
    太陽の船に乗った船乗りみたいに
    愉快に笑い
    葡萄酒を飲み舟歌を歌い
    つねに潮騒と海の微風に酔い痴れて
    ノクターンやセレナーデの波に
    紫色の涙を零している

    宇宙は
    きみたちのために煌々と輝く
    宇宙は
    微笑みの慈愛の光を降り注ぐ
    宇宙は
    きみたちのために道を照らす
    それはすべて
    後に続く者たちの幸せのため
    かくして
    宇宙に降り注ぐ星の光が微塵となって
    すべてのものたちのための肥やしとなる
    誰かのために光の肥やしとなる
    そのためにわたしは
    高々と青い空に
    帆を揚げて出航する

    わたしはいま
    高々と青い空に
    帆を揚げて出航する
    時鐘を鳴らし勇気の舵輪を廻す
    海原は何処までも青く洋々として
    太陽はつねに
    ゆたかな林檎色の光を放ち
    天から花火のような菩提樹の花が降り
    行く手を詩の女神が照らしてくれる
    空には晴れやかな虹が架かり
    多くの夢を乗せた
    花馬車のように顕われる

    夜には満天の星座が
    星めぐりの歌をうたい
    わたしは海上の航海から
    天上の航海へと場所を移し
    永遠の覚醒した航海者となる
    落日色のワインを飲み
    星と月と
    太陽の船に乗った船乗りみたいに
    愉快に笑い
    歓喜の胸を高鳴らせ
    つねに潮騒と海の微風に酔い痴れて
    永劫のシンフォニーの波に
    熱い涙を零している

    #358

    飛鳥聖羅
    参加者

    天空の鏡の上を歩く
           飛鳥聖羅

    僕はハスの葉っぱから
    水玉をはじき つぶやいた
    《剃刀だ 金の剃刀だ!》
    街並が妙に明るんで見える明け方
    七月の空を見上げて
    雲間から射してくる光を見た

    その瞬間
    よろこびがからだをつらぬいていく
    ここ数年
    僕はワイシャツを腕まくりし
    楽観の竪琴をかき鳴らしてやってきた
    心次第だと自分に言い聞かせ
    自由につま弾いていた

    心を望むことのイメージで満たせば
    不可思議なことも
    向こうから近づいてくる
    万里の彼方から
    さいわいを呼び集めるのは
    心次第だと自分に言い聞かせて
    軽やかに口笛を吹いていた

    幸せになるには?
    さっとTシャツに着替え
    スニーカー履いて
    外に飛び出してみればいい
    そこにはまだ見たこともない
    美しい夕焼けが
    赤や紫やオレンジのしずくを
    バラまいているのを見かけるだろう

    見たこともない
    美しい鳥が羽ばたいていて
    大きな樹に止まって
    未来に希望が持てる歌声を
    そよかぜと響かせている
    電光掲示板に流れるニュースが
    五千年の時を超えて
    縄文の過去に美しく生きた人々の
    文化の香りを届けたりする

    幸せになるには?
    窓から覗いてみれば
    空には流星群が流れ
    眼を釘づけにするだろう
    宇宙は
    ダイヤモンドダストのかけらを
    髪にまき散らし
    光の花束が
    テーブルを飾っていたりする
    青いリビングの闇の中で

    僕は公園のベンチに腰掛け
    遠ざかった百五十億光年の
    孤独を思いやる
    この世に生まれてきた歓びを
    何よりも感じたりする
    手垢にまみれちまった言葉が
    むなしく笹舟と消えて行く
    生きることが胸をせつなくさせる
    瞬間があったとしても

    眠っていた何ものかが
    心の深い海底から
    眼を醒まして立ち上がる
    僕の中に眠っていた死火山が
    活火山になって熱く燃える
    マグマを噴き上げる
    狂い咲く情熱に目覚めた
    瞬間がやってくる
    日の出の勢いでほとばしる
    僕の中に眠っていた人が
    囁き始める
    見知らぬものを励ますかのように

    さあ 立ち上がれ!
    勇気をだして這い上がれ
    泥沼の淵から 這い上がれ!
    心の中にある
    百万年の洞窟の闇に灯をともせ!
    この道が何処へ続いていようとも
    幸せの冠は確かに僕のものだ

    眼の中の蒼く澄んだ湖に
    日の光がなだれこむ
    未来が牛革のサンダルを履いて
    あいさつにくるのが見える
    青い鳥がくちばしに麦の穂をくわえて
    訪れる日もそんなに遠いことではない

    僕は葡萄の種を
    ぷっと口からとばし つぶやく
    《金の剃刀だ!》
    黎明の空を眺めて
    内から湧きだしてくるものを捉えた
    すべてが
    光の言葉でいろどられ息づいている

    愛はあらあらしい波涛を越えゆく船
    僕をよろこびの波に酔わせ
    平安は水平線に現れた金色の太陽
    希望と未来の双子を
    僕の胸に解き放つ

    はじめて迎える夜のように
    この世でもっとも美しい言葉で
    あいさつしよう
    目にするすべてのものに
    ありがとう!
    目の前に広がる地球のすべてに
    天空にかがやくすべての星に

    蜘蛛の網に絡めとられた星が消え
    蜘蛛の糸が虹色の光を放つ
    朝の光が差し込む山中の
    草の葉に
    危なっかしく止まっている水玉
    河原の湿地に生える草
    時とともに色を変えてみせる紫陽花
    道ゆく子どもやおとなたちの
    背中や足下におどる蝶のような影

    世界がこんなに美しいのは何故?
    そこに刻んだ足跡が
    池に映った月影のように光っているから
    なんでもない事柄の中に
    花にとまった蝶のひそやかさで
    人を美しくさせる
    秘密の天窓が開いていたりする

    弾む歩調で歩いて行く先には
    季節の風が
    街路樹の木の葉をそよがせ
    それを見る人に
    何か奏でてみたい思いを募らせて
    通り過ぎていく
    見えないものを観る目つきで
    不可思議の橋を渡っていたりする

    いつかまた同じ風に
    ばったり出くわしたりして
    自分の中に眠っていた人間が
    その風の柔らかい手に髪を撫でられ
    子どものように目覚めて
    ふいに自分の前を
    歩き出していく姿をまのあたりにする

    城や宮殿は
    こころのなかに築けばいいのだ
    僕は葡萄の種を
    ぷっと口から吐き出し つぶやく
    《覚めた空を切り裂く金の剃刀だ!》
    黎明の空の
    光のカーテンをいつまでも眺めて

    #359

    飛鳥聖羅
    参加者

    エニシダの咲く頃
           飛鳥聖羅

    五月 箒状の枝に
    黄色の小花が蝶の舞うように咲き乱れる
    エニシダの花
    この金雀枝の咲く頃
    ヘッセの本を読んだ詩人が
    淡い影を帯びて
    夢の中を立ち去って行くのが見えた
    目覚めの良い朝
    コーヒーを入れて
    わたしはショパンに聴き惚れている

    香りの強いタイサンボクの花が
    王者のように君臨している庭
    その庭の石に花の匙が輝いている
    虚空から降ってきたタイサンボクの花だ
    夕べの月下に見た花はあきらかに
    邪悪を寄せつけない光彩を放っていた
    庭に足を踏み入れて
    わたしは迷いを吹き払う風をふところに呼ぶ

    六月 燃える石榴の真紅の花が
    夏空を焦がしている
    このザクロには果肉はないが
    甘酸っぱい果汁を多量に含み
    子どもがこの外種皮を喜んで食べる
    今はその季節ではないが
    その日が来るのが待ち遠しい

    薔薇でも紫陽花でも
    花はひとに愛でられる日を待っている
    花は太陽が恋しくて生きている
    そんなふうに咲いている
    わたしが買うのは
    花に託したわたしのめくるめく思い
    あの人に届ける
    花言葉のシグナルが虹色に廻り出す

    花は何も言わないが
    わたしのこころはわかっている
    花の船に乗せて
    わたしはその人に贈るだろう
    誰よりもあなたが大事な人だ
    と伝えるために
    花は ひとに伝令を伝えにいく
    生きた使者となる

    彼女は花籠を片手に
    花を売る花売り娘
    小さな街の小さな花屋で
    花を育てている
    わたしの探す花も
    きっとあるにちがいない
    大事な人にわたしが贈る花が
    わたしが行くのを待っている

    彼女は小さな街の
    小さな花屋の花売り娘
    異国の船も
    たびたびやってくる港街の
    花売り娘
    彼女が売るのは
    花の言葉の宝石
    空を彩る星となる花の宝石
    異国の人もみとれる
    宝石の魅惑の花
    地から湧き出た異彩を放つ花

    彼女が売る花は
    永遠に枯れることがないのを祈る
    わたしが胸にいだく泉に
    似合う花に違いない
    愛する人に届ける
    覚めない夢の青い薔薇の花
    いくつもの恋物語に
    わたしの花がその宴を飾るだろう

    良く歌われた
    恋情の化石の紫水晶も
    朝の輝きにレディをみちびき
    彼女の髪と胸元を花が飾り
    朝の光の中に毅然と佇ませていたりする
    口にする歌は
    祈りとほほえみと
    歓びに溢れた潮風のそよぎ
    ライラックやアカシアの花が
    日射しを浴びて甘い芳香を漂わせている

    乙女たちが森を恋い
    スイカズラの花の蜜を吸う
    子どもたちに交じって
    愛しい人が小説を小脇に抱えて
    遠くの海を眺めているのが眼に浮かぶ
    花屋は
    晴れた青空の
    淡い紫色のラベンダーが香り立ち
    風に吹かれるラベンダー畑が
    幻想曲のながれる川面に甦る

    愛しい人の胸をせつなくさせ
    ときめかせる花
    睡蓮を驟雨が濡らしていく
    夜には花を閉じる
    水辺の女神ニンフエアの睡蓮は
    純潔のシンボルだ
    麗しい人が求める永遠に凋まぬ花が
    花籠で目を醒ます
    そんなとき
    わたしの情熱の波が
    花屋の娘の花を
    歓びの海へと攫っていく

    #360

    mariko sumikura
    キーマスター

    飛鳥さんのペンは、翼を持っています。その想像の翼は、読者をまだ見ぬ世界へ連れてくれます。

    #363

    飛鳥聖羅
    参加者

    処女航海
          飛鳥聖羅

    夜に入ると真夏の夜の夢みたいな
    光の世界が僕の眼を鷲掴みにした
    あの星の輝きはどうだ!
    黒い漆を溶かしたような漁村の夜空に
    一番星の金星みたいな星ばかりが
    天の宮殿を覆い尽くしているではないか
    この星空のエデンを知らぬものは
    恐怖を覚えるかもしれない
    太古の昔より智慧あるものは
    胸に畏怖をいだき
    敬う心根を秘めていたはずだ
    僕はあなたを誘い
    浜辺へと闇の中を歩いて行く
    潮の香が鼻腔をくすぐる

    ボートにあなたを乗せ
    闇の中を沖へと漕ぎ出していく
    あなたの瞳を見つめたまま
    海は凪ぎ 溶鉱炉から出てきたばかりの
    鏡のように熱く燃え しずかだった
    海面には天空の星々が映り
    僕たちは銀河を渡る船乗りになった
    さんざめく銀河の光る帯をまたぎ
    デネブとアルビレオが
    美しい十字形の白鳥座をくぐり
    流れ星の姉妹を仰ぎ見た

    パタゴニアに咲く
    チルコという名の花は
    深紅の色が見るものを魅了するという
    同じくこの海の銀河に
    魅了されないものはいない

    バクトリアは中央アジアの
    アムダリヤ中流域
    ヒンズークシ山脈北麓地方の
    古い地名だ
    東西交通の要衝の地だった
    紀元前二五五年自立し
    ギリシア系植民国家として栄えたが
    紀元前一三九年にトハラ族に征服された
    民族の栄枯盛衰は避けられないが
    銀河はすべてを見てきた
    生あるものも死せるものも
    銀河の掌の中にある
    僕はオールを置き
    流れに身を任せていた
    大化の改新から平城遷都までの
    白鳳時代
    その前の飛鳥時代とその後の
    天平時代をしのび
    古いその時代の美学を思いやった

    周りは静かだ
    海風もなく聞こえるものは
    あなたと僕の呼吸する声だけ
    それだけが生命あるもののごとく
    二人の絆をつよく結びつけている
    こんなとき時間が
    生命の翼を広げて
    舞い降りるのかもしれない
    あなたの手と僕の手を空へ伸ばせば
    星に手が届き 星が熟した果実のように
    墜ちてきそうな近さに思われる
    あなたがしずかにやさしく
    海に手を挿し入れると
    海の星はかがやきごと揺れ
    いま僕たちが何処にいるか分らなくなる

    海を曼荼羅にしていた星座が崩れたが
    僕たちのボートは
    また銀河の中を漕ぎだした
    何を手がかりに進むべきなのか
    あなたは知らないだろう
    いまこの眼に見える
    天頂に煌めく星の位置を手がかりに
    風の向き 波の動き 森のざわめきから
    今の地形や場所を読む
    智慧がなければ僕たちは
    遭難してしまうだろう
    スターナビゲーションを知らなければ
    四方八方 星明かりしかないのだから
    あなたは完全に方向感覚を失うだろう
    闇の中を航海するには
    古代の智慧を用いるしかない

    もし あなたが独りぼっちで
    闇の中へ放り投げられたら
    どうするだろうか
    そのとき大切なのは
    眼を閉じてあなたの心に
    大きな白地図を描けばいい
    その地図に知っている知識を
    丁寧に一つひとつ当てはめていくのだ
    そしてあなたの想った方角へ
    闇の中 一気に漕ぎだす
    その先には自分の目指す場所が
    必ずあると深くふかく
    強くつよく信じてイメージする
    仮にあなたのそのイメージが
    波頭のように崩れたら
    あなたはきっと遭難してしまうだろう

    信じることだ
    あなたが目指す場所
    求める場所が其処にあることを
    ただ疑わずに真っ直ぐ素直に信じるのだ
    そうすればあなたは
    確かに自分の場所に辿り着く
    心を白地図にして
    航海する力を智慧にすれば
    僕たちの処女航海は
    成功したと言えるだろう
    僕はあなたを乗せてボートを漕ぐ
    魂のふるさとを目指してボートを漕ぐ
    永遠のふるさとがどこにあるか
    おぼろげながら気がついた
    闇の中の処女航海をやりきって
    僕たちは僕たちの楽園の浜へと
    二人のボートを快適に滑らせた
    再び海の銀河を渡り終えて

    #376

    飛鳥聖羅
    参加者

    思い出の「ホテル・カリフォルニア」
                 飛鳥聖羅

    何処かで歯車が軋んでいる
    停滞する塵埃に風も吹かず
    咲き匂う花蕊をもとめ
    蝶やミツバチが彷徨い飛ぶ
    上昇する気温と海水の高鳴り
    身繕いにとりかかる嵐の眼
    戦慄の笛を鳴らして魔神が襲う
    メタモルフォセスの幕が上がる

    稲妻が空気の膜を歯形にわななかせ
    天の鼓がぼくの鼓膜を破ろうとする
    メソポタミアの
    アッシュールバニパル王の
    ライオン狩りのレリーフが踊る
    福岡の浮羽郡にある
    《めずらしづか古墳》
    その石室の奥壁には
    櫂を操る人物と鳥のいる舟と
    太陽と星などが描かれている

    遠き古代より今に至るまで
    生きる糧をもとめ海を渡る
    戦う勇者の数は知れず
    メフイストフェレスを退ける

    ゴルゴン三姉妹のひとりメドゥーサ
    髪は蛇で猪の牙と黄金の翼を持ち
    その醜悪な顔を見る人を
    石に変えてしまう
    あまりの醜悪に
    魂を抜かれて人は石になる

    彼女も ペルセウスに
    首を切り落とされ殺された
    醜悪の魔手を砕くのは
    智慧と賢明の櫂の漕ぎ手のみ
    ルネサンス期フィレンツェの名門
    メディチ家は
    東方貿易と金融で産を成し
    十五世紀後半以降
    ジョバンニ・コシモ・ロレンツォを輩出
    市政を掌握するも一七三七年断絶

    世界各地にメトロポリスあり
    メトロポリタン歌劇場は
    十九世紀末以降
    世界の檜舞台となったが
    いま世界には
    メナンドロスの気むずかし屋はいるか
    メディアクラシーの
    信号が飛び交う現代の空に
    青みがかった紫の瞳が
    黎明の時刻
    ぼくに目覚めの合図を送ってくる
    メッシュコロレの毛染めの葉陰に

    大いなる山地から発する川のゆたかさ
    何処の国の川であれ
    海への旅は物語だ
    タイ中央部を南に流れ
    シャム湾に注ぐチャオプラヤ川
    微笑の国を潤す
    時代の舞台で
    いのちにとどろく歌声はあるか
    ヒマラヤの麓で暮らす人々よりも
    豊かな心はあるか

    青森のマルメロの香りを
    知っている人がいるなら
    そのピンクの花と明るい黄橙色の
    形が好きになるにちがいない

    インダスの
    不思議都市モヘンジョダロ遺跡
    下水溝も完備し大浴場 穀物倉
    集会所を備え煉瓦作りの住宅もあった
    遠くマンゴーの実のなる国
    癒しの国よ

    それに比べわが林檎と桃と梨の国
    扶桑国は桜のえにしのふかい国
    飛鳥の昔より火の鳥の飛ぶ国
    万年の四季の光彩
    時代の光を紡ぐ

    ユニオンジャックの海辺にも
    ジパングを洗う黒潮にも
    ローマのテレベ川河畔や
    地中海にも
    愛を呼ぶイルカの泳ぐ
    姿が美しい 永遠に

    思い出すのは
    「ホテル・カリフォルニア」
    それは出口のない幽霊ホテルか
    そこにチェックインした旅人たちは
    夢と現実の落差に気づいて
    しらけた顔をしてソファに座っている
    その多くは青年たちだ
    外から見ていた時はまさに
    光溢れる夢の地だった
    カリフォルニア

    その町に憧れて多くの青年たちが
    地方から出てきたのだった
    来てみたら
    そこには何かが欠けていた
    夢見た成功は手に入れたが
    代わりに自由が奪われていった
    虚しさだけが残った
    金や名声を得ても
    純粋な子どものような歓びが
    何処かで抜け落ち
    虚無の鏃が突き刺さってくる

    ロックグループの
    イーグルスはうたった
    「ワインを持ってきてくれないか」
    するとボーイは言い放った
    天を仰ぐような遠い目つきで
    「そのようなスピリットは
    一九六九年以降一切ございません」
    (あの頃のロック魂をもった本物の
    アーティストなんて居ないのさ)

    またイーグルスはうたった
    「気がつくと僕は
    出口を求めて走り回っていた
    元の場所に戻る通路を
    なんとか見つけなければ……」
    すると夜警が言った
    「落ち着いて自分の運命を
    受け入れるのです
    チェックアウトは自由ですが
    ここを立ち去ることは
    永久にできません!」

    青森の田舎を出た頃が懐かしい
    一九六九年五月
    僕は夜行列車で
    青森駅を発ち大都会にやってきた
    (それは中学時代に
    修学旅行で東京に来て以来だ)
    その三ヶ月後の八月十五日
    遠い異国のアメリカの地は
    ニューヨーク州サリバン郡
    ベセルで
    ウッドストックフェステバルが
    開かれ十七日の日曜日まで続いた

    それはロックを中心とした
    大規模な野外コンサートだった
    三十組以上のロックグループが出演し
    入場者は四十万人以上を数えた
    コンサート会場は
    個人所有の酪農農場だった
    この一帯は
    キャッツキルバレーと呼ばれる
    アメリカインディアンの共同居住区
    会場へ向かう高速道路は
    人々でごった返した

    この週末は雨の上に施設は人が込み合い
    参加者は食べ物やアルコール
    ドラッグを分け合っていた
    雨による中断で
    プログラムは大幅に遅れ
    十七日の最終日
    トリを務めたジミ・ヘンドリックスが
    登場したのは明け方であった
    彼の名演奏を目にした者は少ない
    大多数の人が
    帰ってしまった後だったから

    このフェステバルは
    カウンター・カルチャーを集大成した
    六十年代の
    ヒューマン ビーインと呼ばれる
    人間性回復のための集会でもあった
    ヒッピー時代の頂点を示す
    象徴でもあった
    ウッドストックには
    平和と愛を祝うために
    四十万人以上が集い
    幸せな時間を共有したとは
    よく語られるロマンチックな伝説だ

    実際には多くの者は
    この混乱した状況を
    否定的な意味の
    カオスだと感じていた
    とはいえこの祭典は
    六十年代を体験した同世代の人々の
    輝かしい記憶の余韻として
    しばらくは生きつづけた
    ヒッピー幻想の終焉と
    崩壊をまざまざと見せつけたのが
    七五年のベトナム戦争における
    アメリカの敗戦と
    ホテル・カリフォルニアであった

    #378

    飛鳥聖羅
    参加者

    白馬と白鳥の歌
          飛鳥聖羅

    ある星の谷間に広がる荒地に
    ひときわ輝く白馬がいる
    その故に荒地聖と名づけられた
    美しい白馬だ
    その白馬
    白鳥が鳴くのを聴いていななく
    これひとつの不思議
    白鳥の鳴き声と
    白馬のいななく声を聴いて
    輪陀王は威光勢力を増していく

    白鳥が天使となって舞い降りた
    みずうみに日が射し込み
    幻想劇の幕が上がる
    白鳥の声は金管楽器のひびきの音色
    空も水も透き通り
    汚れを寄せつけぬ雪化粧のみずうみに
    白鳥は翼をたたみ
    しずかな澄明の時刻を刻む

    ながれる雲に風のそよぎ
    息づく鳥の鼓動にめざめる息吹
    荘厳は太陽によって齎され
    壮麗は白鳥によって極められる
    生きてあるものの美しさを
    すがたに滲ませて鳥たちは
    乱舞飛翔の時を待つ
    いまぼくは眼をこらし眺望する

    ダイヤモンドが粉々に砕けても
    これほどの美しさを放てようか
    空が割れて恋に落ちた人のごとくに
    ぼくは見とれ 酔い痴れ
    鳥たちを観る
    その白鳥の歌 覚醒を促す弦のひびき
    愛しい人を呼ぶ声に似て
    冬の空気の冷たい鼓膜を震わせる

    ウルクの王
    ギルガメッシュの冒険を記した
    古代バビロニアの
    叙事詩を朗誦し
    ぼくはルネサンスの画家
    ギルランダイオの
    絵を真似た細部描写の美的陶酔から
    目を醒ます ひとり佇み
    白鳥の愛と飛翔の美学の酒に酔い痴れた
    冬の朝の湖畔に

    白鳥は臨終に際して
    自分の声を歌に表し
    それがはじめの終わりだという
    伝説がある
    空から舞い落ちながら
    もの悲しく音楽的な歌声を響かせる
    白鳥の歓びの歌こそ聴くべきだ
    白馬もいななき
    人も魂を震わせるほどの
    美しい歓びの歌を聴くべきだ
    ぼくたちの星の荒地にいるならば

    青い星の谷間に広がる荒地に
    駿馬と称えられる白馬がいる
    その故に荒地聖と名づけられた
    美しい白馬だ
    飛来してきた白鳥はその白馬を見て鳴く
    白馬は白鳥の声を聴いていななく
    白鳥の鳴き声と
    白馬のいななく声を聴いて
    輪陀王は活力をみなぎらせていく

    白鳥が天女となって舞い降りた
    みずうみに日が射し込み
    幻想曲の調べがこだます
    白鳥の声は金管楽器のひびきの音色
    空も水も透き通り
    汚れを寄せつけぬ雪化粧のみずうみに
    白鳥は翼をたたみ
    春になって北帰行するまでの間
    ここに棲む

    ながれる雲に風のそよぎ
    息づく鳥の鼓動にめざめる息吹
    荘厳は太陽によって齎され
    壮麗は白鳥によって極められる
    生きてあるものの美しさを
    すがたに滲ませて鳥たちは
    乱舞飛翔の時を待つ
    いまぼくは眼をこらし眺望する

    ダイヤモンドが粉々に砕けても
    これほどの美しさを放てようか
    空が割れて恋に落ちた人のごとくに
    ぼくは見とれ 酔い痴れ
    鳥たちを観る
    その白鳥の歌 覚醒を促す弦のひびき
    愛しい人を呼ぶ声に似て
    冬の空気の冷たい鼓膜を震わせる

    輪陀王の悪政のためか
    過去世の悪業のゆえか
    白馬が一時に消え失せたために
    白鳥の鳴き声も途絶え
    大王の力も急に弱くなった
    王は勅宣を出し
    白鳥を鳴かせるものを募ったところ
    ひとりの菩薩が現れ諸仏に祈願した
    千の白馬があらわれ
    千の白鳥が鳴き
    大王の威光勢力は再び増していった

    白鳥は臨終に際して
    自分の声を歌に表し
    それがはじめの終わりだという
    伝説がある
    空から舞い落ちながら
    もの悲しく音楽的な歌声を響かせる
    白鳥の歓びの歌こそ聴くべきだ
    白馬もいななき
    人も魂を震わせるほどの
    美しい歓びの歌を聴くべきだ
    ぼくたちが星の荒地にいるならば

    注 荒地聖は、あれちひじりと読む。

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